国の政策をいち早くおさえるビジネスオーナーマインド(国土交通省編)

国土交通省は、子育て世帯への支援、および2050年カーボンニュートラルの実現の計画の一環として、省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図る「こどもみらい住宅支援事業」をスタートさせました。省エネ性能の高い新築やリフォームを行った場合の新しい設備設置や改修工事に対して、補助金を現金で受け取ることができる制度です。新型コロナウイルス感染症が長期化し、各家庭の生活スタイルもさまざまな影響を受けています。特に、子育て世帯においては、収入の減少などで家計がひっ迫し、各家庭の養育費にも影響を与えうることが懸念されています。子供をもつ家庭への支援は、日本の将来を見据えるうえで重要であり、若い子育て世帯が住宅取得をする際の経済的負担を軽減するこの「こどもみらい住宅支援事業」も、その一環として採択された国の事業です。

将来の持続可能な社会を目指すという点では、先に述べた「2050年カーボンニュートラル」の実現もその大きな動きのひとつと言えます。世界が取り組むべき気候変動問題の解決に向け開かれた2015年のパリ協定では、「世界的な平均気温上昇を抑える」、「温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成する」といった内容が取り決められました。ここで採択された内容を「2050年カーボンニュートラル」と銘打ち、現在世界各所で取り組みが進められています。これを受けて日本政府も、2020年10月、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを2050年までに実現すると宣言しました。今回の「こどもみらい住宅支援事業」では、将来的に省エネ性能を有した住宅が増えるようなストックを形成し、カーボンニュートラル社会の実現に拍車をかけたい狙いがあります。この事業が開始されることを受け、ミサワホームやLIXIL、タカラスタンダードなど建築・リフォームを手掛ける多くの企業が、対象となる商品の提供を打ち出し、制度を利用した機会提供の宣伝を軒並み開始しているところです。

事業のスタートは2022年1月、交付申請の受付は2022年3月28日より開始されますが、これらの内容は、それ以前から、国土交通省内で令和3年度補正予算案として審議されていたものです。専門家からの意見聴取や有識者会議などを経て磨き上げがなされ、2021年11月19日に新たな政府の経済対策として閣議決定され、今日の「こどもみらい住宅支援事業」という制度が実施される運びとなっています。本件に限らず、このような一連の協議は公に発表されてはいるものとはいえ、日々の生活の中で気づくことが非常に難しい現状があります。国の政策を利用することになる個人や中小企業、大企業にとっても重要な情報であるにも関わらず、届くべき対象に政策そのものやその内容が事前に周知されているとはいいがたく、国税を投じて実施されるこのような事業を利用して企業活動に活かす、あるいは個人としてもこのような制度を活用する、など普通に利用されてしかるべきものが、結果的に利用できていない事態が発生しているケースが存在していることが予想されます。今回のケースであれば、所得水準が高くない子育て世帯への住宅取得を促す政策であるにもかかわらず、若い世代でこの事業が認知され新築購入・リフォームのきっかけになっているかと言われれば、なかなかそうとは言い切れないのではないでしょうか。

このような「政府」、「企業」、「個人」間の情報格差や情報乖離の是正は、活力ある未来社会の基盤づくりにも大きな影響を与えることになるとの思いから、将来開始される可能性の高い国の事業の方向性をおさえるため、「政策情報の定期的なリスティングサービス」はかなり有用であると我々は考えております。これらの情報を日々収集することは、資本主義や民主主義、あるいは国の動き方を知る上でも、今後ビジネスパーソンに必要とされる思考回路であり、多くの方々に積極的に取り入れていただきたいと思っています。

少し話がわき道にそれましたが、本筋に戻し、ここからは、「こどもみらい住宅支援事業」の事業内容の詳細や気を付けるべきポイントをご説明いたします。注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入をした場合は、子育て世帯又は若者夫婦世帯であれば対象となります。年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指して作られる「ZEH住宅」や、「認定長期優良住宅」、「認定低炭素住宅」、「性能向上計画認定住宅」などが主な対象となります。加えて、それ以外の一定の省エネ性能を有する住宅であっても、証明書などが省エネ基準に適合する場合には、省エネ対策をした注文住宅の新築あるいは新築分譲住宅を購入したとみなされ、対象となる場合もあります。住宅の省エネ性能等に応じ、60万円から100万円の補助金を受け取ることができます。

リフォームに関しては、子育て世帯夫婦などの条件なく、すべての世帯で対象となっていますが、子育て世帯であれば補助上限が引きあがるなどのメリットを享受できるのが特徴です。補助対象となる工事内容は、「開口部の断熱改修」または「外壁、屋根・天井または床の断熱改修」、「エコ住宅設備の設置」のいずれかが必須となっており、これらと同時に行う「子育て対応改修」、「耐震改修」、「バリアフリー改修」、「空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置」、「リフォーム瑕疵保険等への加入」などが補助対象となります。なお、建材・設備メーカー等が元請けとなり、自社の対象製品を用いて自らリフォーム工事をした場合は対象になりません。また、申請する補助額の合計が5万円未満の工事が補助の対象にならない点も、気を付けておくべきポイントです。補助の対象となるには、申請時期や施工期間にも条件がありますので、確認しておきましょう。契約が2021年11月26日以降に締結されており、かつ、工事の着工は事業者登録が行われる2022年1月11日以降のものが対象です。さらに、住宅の引き渡し、入居、完了報告の期限も決められており、戸建住宅では2023年5月31日まで、共同住宅等(階数が10以下)は2024年2月15日、マンションなど共同住宅(階数が10以上)は2024年12月31日までとなっていますので、対象となっている期間内に申請から施工まで完了させなければならない点に注意が必要です。新築の場合は特に、工事の完了に間に合わないなどの事態が発生しないよう、早めに計画を進めることが大切だと言えます。対象となる場合、ならない場合の条件や注意点が少し複雑な事業ですので、HPで確認しておきましょう。詳細は事務局に問い合わせることでも確認できます。契約をした後に対象外となることのないよう、事前のチェックが重要です。

当社では、「こどもみらい住宅支援事業」を一例に、このような国の政策をフォローする定期的なリスティングサービスに関して非常に積極的に活動しており、その情報取得のhow toやビジネスマインドを醸成していくためのセミナーの開催も随時企画しております。個別のお知らせになりますので、セミナー参加希望者はこちらにお問い合わせください。

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