http://www.theglobeandmail.com/globe-investor/beware-of-cheap-us-banks-for-sale/article1608312/
銀行を買収することは、自分の銀行を設立する有効な方法であることは事実ですが、安すぎる銀行に手を出すことは危険です。確かに格安の銀行株を買って、大きな利ざやを儲ける魅力は理解できますが、その結果として巨大な損失を生む可能性もあるものです。
銀行の買収に関して、金融コラムニストのデヴィッド・ミルステッド氏が、カナダの新聞グローヴ・アンド・メール紙に興味深い記事を寄稿しているのを引用します。
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米国の銀行業界は景気回復に向けて奮闘していますが、上場している銀行にはハゲタカ達の機会が多くあります。
しかし、もし貴方が、South Financial Groupを他の人たちと一緒に買えるトロント・ドミニオン銀行のような大きい銀行の頭取でなかったら、買収されたくない(敵対的買収のターゲットとなる)銀行の買収に対する抵抗策に、悩まされ、買収のターゲットとなる銀行の株式を購入するのに苦労するでしょう。
良い例が、ワシントン州のフロンティア銀行買収です。この銀行は、ワシントン州の著名な商業銀行ですが、長年貸し出すための資本の問題に悩まされていました。そして2008年には、その資本の不足が顕著になってきました。そして2010年初頭には、株式を監視する人々から、2010年4月15日までに新たな投資を得るか、銀行崩壊リスク回避策を講じなくてはならないことが発表されました。
しかし、4月15日になっても、解決策はなかったのです。それでも、ナスダックの上場企業で、フロンティア銀行の親会社であるフロンティア・ファイナンシャル社は、翌4月16日に1株US3ドルに近い値を付けました。
4月26日には、フロンティア・ファイナンシャル社の株価は、おおよそ8ドルの値を付け、終値は、US5.88ドルを付けました。ということは、4月15日の株価のおおよそ2倍です。
230万株以上が取引されましたが、これは通常の1日の取引株:200,000株をはるかに上回るものです。
地元のメディアは、何故フロンティア社の株が買われるのか分かりませんでした。しかし、彼らはGabriel Infinity Actsと名乗るブロガーによるWEBサイトの4月26日の投稿を見逃していました。この記事は、「Infinate Freedom Foundationが、1株当たり、USD8.88でフロンティア銀行を買収する途中だ」と書いており、更に著名な投資家ジョージ・ソロスが関与しているとも書いています。
4月26日の週末には、タコマ・ニューストリビューン紙が、「Gabriel Infinity Actsは、Gabor Sandor Acs氏で、ハンガリーの人である」と報道しました。また、テレビプロデューサーのWilliam Wilson氏が、このAcs氏にインタビューした内容を引用しました。
「実際このAcs氏は資金を持っている訳ではありません。しばしば、彼がちゃんと仕事をする時を待たないといけません。我々は彼の行動全てを把握している訳ではなく、ただ彼を助けているだけなのです」
Acs氏は、タコマ・ニューストリビューン紙の取材に対して「私は、ソロス氏にコンタクトを取ろうと考えています。なぜなら、私も彼もハンガリー人だからです」と答えています。
4月26日のブログの記事の雑多な断片からは、ソロス氏や彼の投資会社が具体的に関与していることを裏付ける記述はありませんでしたが、それを裏付けるようなタコマ紙の記事でした。
そして、フロンティア銀行は噂を否定するため、公式な発表をし、銀行としての噂を消すように努めましたが、この銀行の株を持っている投資家達には、効果がありませんでした。この銀行の株は、USD3ドル、つまりこのブログが投稿される前の株価より高く上がり、4月30日、米国政府の規制が行われるまで続き、5月3日、フロンティア・ファイナンシャルは、破産宣告をしました。
そして、その後数日経って、この株の株取引が再開されて、株価は、1株43セントまで急落し、信じられないことに最大75セントまで上がりました。フロンティア銀行のCEOから正式なコメントはありませんでした。
フロンティア銀行の例は、典型的な例ではありませんが、この様なケースに巻き込まれないことが必要でしょう。
他の例? 他の例だったら、ネバダ州のTierOne Bank of Lincoln、そしてその持ち株会社であるTierOne Corp.です。この銀行は、2009年1月には、既に警告が発せられていました。それは株式を監視する人々からは、その銀行の資産価値と資本に関して疑問の声が寄せられ、結果として株価は暴落しました。
今まで、この銀行に希望の光が出てきたのは事実です。2009年9月、TierOneは、支店の半分近くを売ることにしたと発表しました。資本を集めるためです。しかし、この銀行の資本比率は、株式を監視する人々が要求する条件に遠く及びません。
銀行の株は、安値で売られています。しかし、その株価の上下は激しいです。
一番良い例は以下です。
4月25日日曜日、TierOneは、監査法人である。KPMGが、その役から解任されることを発表しました。そして2008年の監査には明白な間違いがあって、それがこの解任理由だとも発表しました。次の日、TigerOneの株価は、46パーセント上がり、1株82セントになりました。
役に立つ金融ステートメントのない銀行株は、投機には良いと思った人々は、この銀行の株を買い、株式を監視する人々は、この銀行の支店売却に反対しました。支店売却によって、TigerOneが悪くなることを恐れたからです。4月30日には、この銀行の救済策の期限が来て、何もないまま過ぎてしまいました。
株式を監視する人々が、この銀行の株の売買を停止した前日の6月3日まで、この銀行の株価は少なくとも3セントで取引されていました。取引が停止された時点で、でTigerOneのIR(投資家窓口)の電話は繋がらなくなっていました。
トロントにある投資会社:Hamilton Capital Partners のポートフォリオマネージャーRob Wessel氏は、投機熱には否定的です。Weseel氏は、この2つの銀行の例を私に説明してくれた人で、これら2つの銀行の株を短期で売り抜けた米国銀行株への投資の専門家です。
Wessel氏は、「これらの銀行の長期投資はリスクが大きいので一般の投資家達は避けるべきです。投資家は、銀行が神頼みの資本の増加を図ることによって所有株の価値が著しく目減りするか、最悪の場合、銀行が差し押さえられて投資を失うリスクが何時でもある」と指摘しています。
問題のある銀行の株を買うのは、トロント・ドミニオン銀行のような大銀行に任せて一般の投資家は止めておいた方が良いでしょう。
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銀行に限らず上場企業の株を使って仕手戦を仕掛けるハイエナ企業や投資家がいます。彼らにとって、経営の安定していない銀行の株は格好のアイテムになります。安い銀行の株を使い、ブログなどで怪しげな情報を流して相場を操ることなど彼らにとって簡単なことです。
ミルステッド氏が指摘しているように、安い銀行株には注意が必要です。