M&A件数が過去最多、事業承継で急増

中小企業の事業承継需要を背景に、日本企業のM&A(合併・買収)が増加している。2017年のM&A件数は過去最多で、事業承継M&Aアドバイザー上場3社の成約件数推移も大幅に拡大している。経営者の高齢化で中小企業の廃業が課題となるなか、親族や従業員の後継者がいない経営者にとって事態は深刻だ。後継者問題を解決する手段として、M&Aによる事業承継が今後も注目を集めそうだ。更に親族外継承は57%に上るという。

昨年15%増
M&A助言のレコフ(東京都千代田区)によると、17年の日本企業のM&A件数は前年比15%増の3050件と過去最高を記録。全体件数に加えIn―Inと呼ばれる国内企業同士とIn―Outと呼ばれる海外市場参入の案件がともに過去最多だった。足元の18年1―3月期は前年同期比約32%増の865件と年換算で17年を大きく上回る勢いだ。

レコフの稲田社長は「今年は明らかに事業承継のM&Aが急増している」と指摘する。近年の後継者の高齢化進展や後継者難、経済産業省・中小企業庁の政策を背景に、M&A件数が17年秋口頃から顕著に増加。今では「全体件数の3分の1を事業承継が占めている」(同)状況という。

あらゆる業種で
事業承継M&Aアドバイザーの上場3社も大幅に増えている。17年決算期を対象に成約件数推移を見ると、日本M&Aセンター(3月期)は同104件増の524件。M&Aキャピタルパートナーズ(9月期)の契約素件数は昨年比33件増の91件。ストライク(8月期)は同19件増の67件に伸長。近年、各社ともに右肩上がりで推移している。

国内の中小企業のM&Aニーズはあらゆる業種で高い。レコフが12年―18年3月にかけて業種別にM&A件数推移を調査した結果、製造業・非製造業・商業・金融の4業種ともに増加。製造業では「電気・精密」が23%とトップ。続いて「科学・繊維・ゴム」が15%、「食品・農林水産」が12%だった。グローバル競争が激しく業界の裾野が広い製造業では海外事業強化や事業再編に向けてM&Aが活発化している。また、非製造業の上位は「ソフト・情報」の31%。中小企業の事業承継を巡るM&Aや先端技術に対するベンチャー投資がけん引した。

127万社の選択は…
経済産業省・中小企業庁は、現状で中小127万社が後継者不在の状態にあり、黒字廃業を放置すれば25年までの累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われると試算。親族や従業員の後継者がいない経営者にとって事業承継は廃業・上場・M&Aと選択肢が限られる。廃業を避けたい経営者に上場のハードルは高く、今後も事業承継関連のM&Aが活発化しそうだ。

出典:日刊工業新聞 5月1日

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