はじめに
デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023年度〜2027年度)は、デジタル技術を活用し、地方創生を加速化・深化させることを目指す日本政府の取り組みです。この戦略は、テレワークの普及や地方移住への関心の高まりなど、変化する社会情勢に対応するためのものであり、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を実現することを目指しています。デジタルの活用で地方に人と仕事の流れを創る、が基本的な大きな理念で、これにあわせたデジタル田園都市国家構想推進交付金も様々な形で総務省を中心に予算化されています。中小企業経営者においてもこの国家戦略に対して自社ビジネスの成長戦略を考えることはとても重要な論点になることは言うまでもありません。
本記事では、この総合戦略の詳細について、各章ごとに説明します。
1. 総合戦略の全体像
デジタル田園都市国家構想総合戦略は、東京圏への一極集中の是正や多極化を図り、地方に住みながら都会に匹敵する情報やサービスを利用できる社会の実現を目指しています。これにより、地方の社会課題を成長の原動力とし、地方から全国へとボトムアップの成長を促進します。
具体的な取り組みとしては、デジタル技術の活用が実証段階から実装段階に移行し、各府省庁の施策推進やデジタル田園都市国家構想交付金の活用により、地域の優良事例の横展開を加速させます。また、これまでの地方創生の取り組みの成果や知見を基に、改善を加えながら推進します。
2. 地方創生総合戦略の改訂
まち・ひと・しごと創生総合戦略を抜本的に改訂し、2023年度から2027年度までの5か年の新たな総合戦略を策定しました。この総合戦略では、デジタル田園都市国家構想基本方針に沿って各府省庁の施策の充実・具体化を図り、KPIとロードマップを位置付けています。
地方は、地域それぞれが抱える社会課題を踏まえ、地域の個性や魅力を生かした地域ビジョンを再構築し、地方版総合戦略を改訂します。国は、政府一丸となって総合的・効果的に支援し、必要な施策間の連携を強化します。
3. 地域ビジョン実現を後押しする施策
地域ビジョンの実現に向けて、施策間連携と地域間連携を推進します。関係府省庁の施策を取りまとめ、地方にわかりやすい形で提示し、ワンストップ型相談体制の構築や地方支分部局の活用などによる伴走型支援を実施します。また、他地域のモデルとなる優良事例の周知・共有、横展開を図ります。
デジタル技術を活用した取り組みの深化や自治体間連携の枠組みにおけるデジタル活用の取り組みを促進し、国が事業の採択や地域の選定を行う際に、地域間連携を行う取り組みを評価・支援します。
4. デジタルの力を活用した地方の社会課題解決
デジタル技術を活用して地方の社会課題解決に向けた取り組みを加速化・深化させます。具体的な取り組み例として、教育DX、医療・介護分野DX、地域交通・インフラ・物流DX、まちづくり、文化・スポーツ、防災・減災、国土強靭化の強化などが挙げられます。また、スタートアップ・エコシステムの確立や中小・中堅企業DX、スマート農林水産業・食品産業、観光DX、地方大学を核としたイノベーション創出なども推進します。
5. 地方に仕事をつくる
「転職なき移住」の推進やオンライン関係人口の創出・拡大、二地域居住の推進、地方大学・高校の魅力向上、女性や若者に選ばれる地域づくりなど、地方に仕事を創出する取り組みを行います。
6. 人の流れをつくる
結婚・出産・子育ての支援、仕事と子育ての両立など、子育てしやすい環境づくりを進め、子ども政策におけるDXなどデジタル技術を活用した地域の様々な取り組みを推進します。
7. 魅力的な地域をつくる
デジタル実装の基礎条件整備に関する取り組みを国が強力に推進します。デジタル人材育成プラットフォームの構築や職業訓練のデジタル分野の重点化、高等教育機関におけるデジタル人材の育成、デジタル人材の地域への還流促進、女性デジタル人材の育成・確保などが含まれます。
8. 誰一人取り残されないための取り組み
デジタル推進委員の展開、デジタル共生社会の実現、経済的事情等に基づくデジタルデバイドの是正、利用者視点でのサービスデザイン体制の確立など、誰一人取り残されないための取り組みを行います。
9. デジタル基盤の整備
デジタルインフラの整備、マイナンバーカードの普及促進・利活用拡大、データ連携基盤の構築、ICTの活用による持続可能性と利便性の高い公共交通ネットワークの整備、エネルギーインフラのデジタル化など、デジタル基盤の整備を進めます。
10. 地域ビジョンの実現に向けた施策間連携・地域間連携の推進
モデル地域ビジョンの例として、スマートシティ、スーパーシティ、デジ活、中山間地域、脱炭素先行地域、産学官協創都市、地域交通のリ・デザイン、遠隔医療、教育DX、SDGs未来都市などが挙げられます。地域ビジョンの実現に向けて、政府一丸となって後押しします。
11. デジタル田園都市国家構想の実現に向けた新たな主要KPI
デジタル田園都市国家構想の実現に向けた取り組みを加速化・深化するためのKPIとして、サテライトオフィスの設置、企業版ふるさと納税の活用、こども家庭センターの設置、市区町村でのデジタル技術の活用、物流DXの実現、3D都市モデルの整備などが設定されています。
12. デジタル実装の基礎条件整備に関するKPI
デジタル実装の基礎条件整備に関するKPIとして、光ファイバの世帯カバー率、5Gの人口カバー率、地方データセンター拠点の整備、デジタル推進人材の育成、デジタル推進委員の取り組みなどが設定されています。
13. 地域ビジョンの実現に向けたKPI
地域ビジョンの実現に向けたKPIとして、スマートシティの選定数、「デジ活」中山間地域の登録数、脱炭素先行地域の選定及び実現、地域限定型の無人自動運転移動サービスの実現などが設定されています。
結論
デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023年度〜2027年度)は、デジタル技術を活用して地方創生を促進し、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指す重要な取り組みです。各施策の具体的な内容やKPIを明確にすることで、戦略の実現に向けた道筋が示されています。この戦略を通じて、日本全国の地域がデジタル技術を活用し、持続可能で魅力的な社会を実現することが期待されます。