クロスボーダーM&A。
聞きなれない方も多いだろうが、要するに国をまたいだ事業の吸収・合併(M&A)のことだと解釈していただければ間違いありません。
昨今の日本における円安に代表される急激な通貨変動や事業のグローバル化、IT化はビジネスチャンスを増加させた一方でより事業環境リスクを高めたとも言えます。
事業承継、事業成長、双方の切り札となるM&Aを当社も継続的にじっくり考えていくことにしたいと思っています。
クロスボーダーM&Aの効用
国をまたいだ事業M&Aを現実的でないととらえる時代はとっくの昔に過ぎ去ったと言えるでしょう。
海外進出展開を加速したい、国内競合に先んじて海外同業他社に事業売却したい、ニーズはさまざまです。
実際に、当社にも事業M&Aの相談が世間話の延長で持ちかけられることがあります。
とはいっても事は易々とは進みません。
要するに入口はかなり多いが、出口を見つけるのはプロフェッショナルなM&Aファームの出番となることが多いのです。
切り札としてのM&Aで事業を俯瞰してみる
今回取材させていただいたピナクル株式会社は、有名な独立系のM&Aファームです。
ファウンダーの安田育生氏のCEO人脈もさることながら、「M&Aは情報の積み上げ」(安田氏)という地道な積み重ねも忘れていません。
「事業経営の選択肢のひとつとしてM&Aを常に視野に入れておくことは、経営者の重要な役割でしょうね」と安田氏が語るように、事業成長や事業承継の切り札としてM&Aの相談コンタクトを持っているか否かは、今後の経営の行方を大きく左右するアジェンダになるでしょう。
早すぎても、遅すぎても、だめ。
これこそ経営者だけが判断できるフィールドのはずです。
まさにM&Aは切り札として常に考えておくビジネスオプションなのです。
そこで、ピナクルのジェフリー・スミス氏に実際に起こった事例について聞いてみました。
一本の電話からピナクル史上最短のディールへの道
「ユーロに対する急激なスイスフラン高に苦しんだ米国のFX証券会社が、日本支社の売却を2か月以内に完了しなければならない、という電話が舞い込んできたことがあります。
通常のM&Aビジネスのフロー上非常に難しいものでしたが、この仕事は我々にしかできないだろうと考え、お引き受けしました。
不眠不休で取り組んだ2か月となりましたが、クライアントの期待を上回る結果で売却にこぎつけることができ、しかもその仕事が評価され、新たな依頼もいただけたことはとてもよい経験になりました」とジェフリー氏。
事業のM&Aに興味がある読者も多いと思いますが、とはいえ、このようにうまく進むものなのでしょうか。
トップリレーションが最も事業をやりやすい方向に導いてくれた
「なるほど、その一連のディールでジェフさんが最も重要だったことを1つだけあげるとしたら何でしたか」と聞くと、
「当社の安田と売却候補先のトップマネジメントが直接つながっていたことが最も大きい成功要因です。
たしかに数年前から顧客コンタクトがあり、対話を続けていたことも重要な要因ではありましたが(注:安田氏によると最初の顧客へのコンタクトも安田氏の指示だったようです)、やはりM&Aは大きな額になりますので、信頼関係が構築できているか否かがポイントを分けることが多いですね」。
M&Aというと疎遠な響きを感じる方々も多いと思いますが、結局のところ信頼関係あってこそ。
ビジネスの大前提がM&Aのオリジンなのです。
小が大を飲むこともごく普通になってきたほど、激変するビジネス環境。
当社は継続してM&A、特に国をまたいだクロスボーダーM&Aの研究を今後も取り上げていくことにしたいと考えています。
また機会をみつけてセミナー活動なども行っていくことにしたいと思います。
ジェフリー・スミス 氏
ピナクル株式会社 マネージングディレクター。
クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券にて、M&Aグループに従事。
その後、UBS証券にて、M&Aグループおよびフィナンシャル・スポンサーグループに所属し、クロスボーダーM&A案件を担当。
直近でゴールドマン・サックス証券 エクイティー部門にて、営業チームに従事。
エール大経済学・数学学士。