企業版ふるさと納税制度は、地方創生の推進を目的として2016年に創設された制度です。中小企業経営者の視点から、この制度のメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。地域進出に役立つ側面もありますので、当該自治体との計画と相談が必要なことはいうまでもありません。
メリット
1. 税制上の優遇措置
寄附額の最大約9割が税額控除されます。
法人関係税（法人住民税、法人事業税、法人税）から控除されるため、実質的な負担が小さくなります。
2. 地域貢献によるブランドイメージの向上
地方創生プロジェクトへの支援を通じて、企業の社会的責任（CSR）活動をアピールできます。
地域社会との良好な関係構築に役立ちます。
3. ビジネスチャンスの拡大
支援先の地方自治体との関係強化により、新たなビジネス機会が生まれる可能性があります。
地域の課題解決に関わることで、新規事業のヒントを得られる可能性があります。
4. 従業員の地元愛の醸成
故郷や縁のある地域を支援することで、従業員のモチベーション向上につながる可能性があります。
企業の社会貢献活動への参加意識が高まり、組織の一体感が醸成されます。
5. 柔軟な寄附の活用
寄附先や金額を自社で選択できるため、経営方針に沿った社会貢献活動が可能です。
複数年にわたる継続的な支援が可能で、長期的な地域貢献策を立てられます。
デメリット
1. 事務手続きの負担
寄附の申請や税額控除の手続きなど、一定の事務作業が発生します。
小規模な企業では、これらの手続きを担当する人員の確保が課題となる可能性があります。
2. 即時の資金流出
税額控除は事後的に行われるため、寄附時点では全額の資金拠出が必要です。
資金繰りが厳しい企業にとっては、一時的な負担となる可能性があります。
3. 寄附金の使途に対する影響力の限界
寄附金の具体的な使途については、基本的に自治体の裁量に委ねられます。
企業の意図した通りに寄附金が活用されない可能性があります。
4. 風評リスク
寄附先の自治体や支援プロジェクトに問題が発生した場合、企業イメージにも影響が及ぶ可能性があります。
寄附の動機や金額が適切でないと判断された場合、批判を受ける可能性があります。
5. 長期的コミットメントの必要性
一度寄附を行うと、継続的な支援を期待される可能性があります。
経営状況の変化により支援を中止した場合、地域社会との関係に影響が出る可能性があります。
6. 他の寄附や社会貢献活動との優先順位付け
限られた予算の中で、既存の社会貢献活動と企業版ふるさと納税をどのようにバランスを取るか、判断が必要です。
結論
企業版ふるさと納税は、税制上の優遇措置や地域貢献によるブランドイメージ向上など、中小企業にとって魅力的なメリットがある一方で、事務手続きの負担や資金面での一時的な負担など、考慮すべきデメリットも存在します。
制度の活用を検討する際は、自社の経営状況や方針、地域との関わりなどを総合的に判断し、慎重に決定することが重要です。また、活用する場合は、寄附先の選定や寄附金額の決定、社内外へのコミュニケーションなどを戦略的に行うことで、より大きな効果を得ることができるでしょう。
中小企業経営者の皆様は、これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自社にとって最適な判断を行ってください。
